精神療法とプラセボ効果

 そうすると、プラセボ・エフェクトとは何か。これは結局、本人の精神的な部分が身体に影響を及ぼして、あるいは身体が勝手によくなっている、ということです。何かの理由でよくなっているんだから、これはもちろん自然治癒であり、暗示療法、心身相関で、患者にとってはより幸せなんです。三〇パーセントから五〇パーセントぐらいは、プラセボ・エフェクトで治療の効果があります。
 そしてこのプラセボこそが、精神療法の中心なんです。プラセボ・エフェクトも副作用がときどきあるけれども、副作用が少なくて、そしてよくなって、あんまり金もかからんし、いちばんいいの。これが精神療法の中心です。これだけを覚えて帰れば、今日の講義を受けた価値があります。
 そして「プラセボでよくなったんだから、これは価値がないんじゃないか」とか思わないでね。プラセボの研究結果で、お医者さんによってプラセボ・エフェクトが多く出る人と、あんまり出ない人とがあることがわかっています(神田橋條治神田橋條治/医学部講義』創元社、2013年、pp.161-162)。


*信仰治療を考える上でも示唆的です。新宗教でいう「お助け名人」は、実際に存在するのでしょう。