テレビドラマ「宮本武蔵」とホモソーシャル

 土日に、テレビ朝日木村拓哉主演のドラマ「宮本武蔵」を見ました。吉川英治が戦時体制下に書いた原作をどのように現代的にアレンジするか、に興味があったからです。特に「お通」さんとの「近代的恋愛」をどう位置づけるか、に興味がありました。
 「佐々木小次郎」との「巌流島の決闘」に出かける前に、武蔵は、お通さんに「オレはお通が好きだ。オレの心とからだは決闘に行く。しかし、オレの魂はずっとお通のそばにいる。」という意味のことを伝えます。「立身出世」のためではなく「天下無双」を決するために決闘に出かける武蔵について、「沢庵和尚」(ちなみに、沢庵のモデルは、昭和の右翼の黒幕・安岡正篤だといわれている)は、お通さんに「武蔵と小次郎は、人間の可能性を広げようとしているのだ」と説明します。
 このドラマでは、近代的なロマンティック・ラヴに、原作よりは重点を置いていました。しかし、女性との「近代的恋愛」よりも、男性の「好敵手」―J・デリダのいう「ミニマルな友愛」が成立している男性―との「男同士の絆」を優先しているという点では、原作と変わりがありませんでした。現代の日本人が「ホモソーシャル」を乗り越えるには、まだ時間がかかりそうです。


<自己完成のための殺人>の発見と変容―『宮本武蔵』をめぐって―
http://d.hatena.ne.jp/kkumata/20100329/p1