「剣禅一如」の近代的利用

 結城令聞「剣禅一如ー沢庵和尚の教え」(大東出版社、2001年)を読みました。結城令聞氏(1902-1992)は、東京大学名誉教授(印度哲学専攻)で、唯識研究で知られる学者です。沢庵(1573-1646)は、臨済宗の僧侶でした。この本は、沢庵和尚原意・由希令聞著「剣禅一如」(大東出版社、1940年)の復刻版で、仏教的な(?)ー正確には「仏教もどきの」でしょうー「万理一空」の教えを説いた「剣聖・宮本武蔵」を称揚し、それと同時に儒教的な「臣民の尽忠」の教えを説く、これぞ総力戦体制下の御用学問、という本です。結城さんが存命であれば、「恥ずかしい過去」として復刻を許可しなかったと思います。おそらく遺族が許可したのでしょう。
 現代日本における、「宮本武蔵」を主人公にした井上雄彦のマンガ「バガボンド」の大ヒットといい、日本における「剣禅一如」の伝統は、近代社会において、第二次世界大戦のような現実の戦争にせよ、現代の厳しい経済的な競争にせよ、「心の痛みを感じることなく、効率よく競争相手に打ち勝つ」ために利用されるのでしょう。

沢庵宗彰 http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%B2%A2%E5%BA%B5%E5%AE%97%E5%BD%AD