「精神の科学」/異常/正常

 なお、「精神の科学」はそのいくつかの目的の最後に、異常を通じて正常を、精神の衰弱態を通じて精神のあるべき健康を論じることをひそかに意図している。不安やゆううつや無気力の病理学をここで書きながら、まだもう少し時間はかかろうが、いつか、われわれもそうしたいという思いをもった。もっとも、この世から不安やゆううつや無気力を根絶するためではない。むしろ、悩むに値するきわめて正当な、人間の尊厳をたかめることのできる悩みとは何かを問うためである(笠原嘉「不安・ゆううつ・無気力」『笠原嘉臨床論集/境界例研究の50年』みすず書房、2012年(初出1983年)、p170)。


*「悩むに値するきわめて正当な、人間の尊厳をたかめることのできる悩みとは何かを問う」のは、宗教ではないでしょうか。