近代日本「忠臣蔵」幻想・男らしさ・戦争文化

 これらの地域(熊田註;「戦争の巣」とでもいうべき地域)においては頻繁な戦闘の間に「徹底的に闘う戦争文化」とでもいうべき男性社会の伝統が生じる傾向があって、悪循環を生んできた(中井久夫「1990年の世界を考える」『隣の病い』ちくま学芸文庫、2010年(初出1990年、1996年加筆、pp.186-187)。


*国民統合のために、大正時代に明治政府が「修身」の国定教科書に載せて称揚した「近代日本『忠臣蔵』幻想」(宮澤誠一)は、「意地の美学」(佐藤忠男)に基づいているので、負けがわかっても「気がすむ」まで「戦い抜く」太平洋戦争につながりました(拙著『男らしさという病?』参照)。しかし、近年私の教えている学生たちは、もはや忠臣蔵の粗筋すら知らないほうが多数派です。21世紀に入って、「近代日本『忠臣蔵』幻想」は解体に向かいつつあると思います。中井久夫さんのいう「徹底的に闘う戦争文化」も、男子の「草食化」によって急速に解体されつつあると思います。