「S(統合失調症)親和者」としてのカフカ

(前略)フロイトが“シュレーバー症例”において具体的に描き出し、フランスの構造主義精神分析学者ジャック・ラカンが定式化したように、統合失調者の外界とは、実は、彼らが否認した内面が陰画として立ち現れる舞台である。内面の殺意が否認される時、外界からは殺すぞという声がきこえてくる(中井久夫「統合失調者の言語と絵画」『「伝える」ことと「伝わる」こと』ちくま学芸文庫、2012年(初出1971年)、p151)。


 お前と世界との決闘に際しては、世界に介添えせよ(フランツ・カフカ『夢・アフォリズム・詩』平凡社ライブラリー、1996年、p170)。


 やはり、フランツ・カフカ(1883-1924)は、中井久夫さんのいう「S(統合失調症)親和者」だったのでしょう。