病との共存

 精神医学によって規定される病理性を発見することはもちろん重要だが、治療論に引き寄せて考えれば、病理性を持った人達がそのまま、なるべく無理をしないで生きることが出来る可能性を見いだすにはどうしたらよいのか、またそうなるためには病者と健者の両者にはどのような存在様式の変容が互いに必要なのか、そんなことを考える。この文脈でいえば宗教は個々の病気の単なる癒しにとどまらず、その人なりの生を生きるための全人間的でドラスティックな変容を考える立場であることは言うまでもない(大宮司信『宗教と臨床精神医学ー心の「やまい」と心の「いやし」ー』世界書院、1995年;pp.230-231)。