斎藤環氏と新自由主義

 ついでに言えば、かつて、PHP新書というハウツー本で、『社会的ひきこもり』(熊田註;精神科医斎藤環氏の著作)という変な言葉を使った本がありましたけれども、これも政府にとってはありがたい話で、すぐに飛びつきましたね。NHKばかりでなく、政府は審議会に彼らのグループを呼んで来て、調査をやって対策を立てるということをしました。ひきこもりを自己責任と言い募るためには、非常に都合のいい本だったのです。でも、こういうのを見抜いている人はちゃんといるわけで、『愛を乞うひと』という映画の原作を書いた下田治美さんという作家の方は、著書の中で『ついに出てきたかこの手合いが。小泉はうれしくてしょうがないだろう』と言っています(高岡健不登校・ひきこもりを生きる』青灯社、2011年、p.54)。