不安障害と日本の宗教

 「不安障害」の治療において、精神科医が処方する抗うつ薬SSRI選択的セロトニン再取り込み阻害薬)は、あくまで「不安を乗り越えて生活を立て直していく際の『補助剤』」として位置づけられるべきでしょう。宗教(特に新宗教)の信仰生活において「おたすけ」をする場合の、「たすかりたい」から「たすけたい」への視点、行動の変換には、ある種の認知行動療法としての側面があります。国民医療費の総額には限界があることを考えれば、現代日本精神科医療における薬物療法中心主義は、当面変わらないでしょう。また、近年日本には、うつ病や不安障害の対策のために、イギリスをモデルとして認知行動療法の専門家を増やそうという動きがありますが、この動きには現代社会における人間関係の希薄化を追認しているという側面もあります。「不安障害」の「おたすけ」に日本の宗教(特に新宗教)が貢献できることは、もっと多いはずです。日本の宗教(特に新宗教)に望みたいことは、過去の成功体験にあぐらをかくことなく、かといって精神科医を高しとすることもなく、不安障害の「おたすけ」にもっと積極的に取り組むことです。