イギリスと認知行動療法

 イギリスではIAPTという政策が打ち出され、国をあげて認知行動療法のセラピストを養成する取り組みがはじまっています。当初三年で三〇〇億円以上の予算を使い、七年間でセラピストを一万人増やす計画です。
 イギリスでは、六人に一人が抑うつや不安に苦しみ、就労不能手当を受給する人が一〇〇万人にも達するといわれています。
 セラピストを増員し、認知行動療法を実施する機会を増やせば、苦しんでいる人たちの半数が改善し、職場復帰できる見込みです。
 認知行動療法は、それほど効果が認められているのです。日本でも、イギリスの政策を手本として、いっそうの普及が望まれます.


*IATP(Improving Acsess to Psychological Therapies)は「心理療法へのアクセスを改善させる、つまり「心理療法をもっと身近に」の意味。心理療法とは主に認知行動療法をさしている。
 抑うつや不安による経済的損失が年間2兆5000万円(GDPの1%)。
 その対策として、2008年度から2010年度までの3年間でIATPのために363億円の予算が拠出された(清水栄司(監修)「認知行動療法のすべてがわかる本」講談社、2010年、p26)。


*しかし、イギリスのこのIAPTという政策には、「人間関係の希薄化を追認している」側面があることを見落としてはならないと思います。雅子皇太子妃も、「適応障害」の治療のために2004年以来認知行動療法を受け続けていますが、雅子妃にもっと必要なのは、「何でも話せる友人」なのかもしれません。