嗜癖と暴力

(8)(前略)嗜癖の最大の欠点は、同じ効果を得るためにますます大量の嗜癖行為が必要なことである。この点では暴力も似ていて、家庭内暴力であろうと、教師の暴力であろうと、嗜癖的循環に陥る傾向から逃れることは難しい。始めは、思いあまって行った暴力行為が、あらゆる些細なフラストレーションの解消に使用される。と同時にますます大規模な行為が、かつては些細な行為のもたらしたと同じ効果をかろうじてもたらすかそれとももたさないかのすれすれに目減りする。
(9)以上の点をふまえて、境界例は、そもそもは嗜癖でないのかもしれないが、容易に嗜癖、それも対人関係嗜癖になる。(後略)(中井久夫「説き語り「境界例」」『世に棲む患者』ちくま学芸文庫、2011年(初出1984年)、p165)。


*DV問題を考えるのに有益な視点だと思います。