日本人と植民地意識
しかも、日本人の現実は、いぜんとしてやはりボルタク(熊田註;フランス映画『目には目を』に登場する、アラブ人である植民地原住民)的なのである。ヴァルテル(熊田註;フランス人である植民地支配者)のような、善玉でも悪玉でもない、しかも確信に満ちたアメリカ人が町の中をうろつきまわっているではないか。それもフランスやイギリスをうろつくようにではなく、やはり彼らの東洋をうろつくようにである。(中略)かつて自分がヴァルテルの運命(ボルタクに復讐されて殺される)に出逢ったのだという事実からさえ目をそむけているものに、自分がボルタクであることを認識できるはずもないわけだ(安部公房「砂漠の思想」『砂漠の思想』講談社文芸文庫、1994年(初出1958年)、p342)。
*白井聡氏の『永続敗戦論』をはるかに先取りしている議論です。ここで取り上げられている映画『目には目を』は、少年時代の私にトラウマを与えた映画の一本です。