兵士への道と国家の廃絶

(前略)国家の外に立つことが誰にとっても不可能なら、抑止力としての核を生きるしかないことになる。だから現代の破滅願望は、反体制として機能するよりも、はるかに国家主義、もしくは民族主義的方向に組織されやすい性格を持っているんだ。けっきょく真の核廃絶は国家の廃絶以外にありえないような気がする。あまり希望は持てないね。兵士への道のほうが、国家の廃絶よりはずっと理解しやすいプログラムだからな(安部公房『死に急ぐ鯨たち』新潮文庫、1991年、pp.141-142)。


*その後のグローバル化の急速な進展、とくにIT革命を経て、「国家の廃絶」とまではいかなくとも、「国家の弱体化」は、この文章が書かれた時代よりも、はるかに「理解しやすい」プログラムになっていると思います。