『女のいない男たち』と「女ぎらい」

 村上春樹の新刊『女のいない男たち』を読みました。予想通り、テーマは<ホモソーシャル>(男性間の非・性的な絆)でした。やれやれ。


 すべての女性には、嘘をつくための特別な独立器官のようなものが生まれつき具わっている、というのが渡会(熊田註;語り手の男性の男友だち)の個人的意見だった。どんな嘘をどこでどのようにつくか、それは人によって少しずつ違う。しかしすべての女性はどこかの時点で必ず嘘をつくし、それも大事なことで嘘をつく。大事でないことでももちろん嘘はつくけれど、それはそれとして、一番大事なところで嘘をつくことをためらわない。そしてそのときほとんどの女性は顔色ひとつ、声音(こわね)ひとつ変えない。なぜならそれは彼女ではなく、彼女に具わった独立器官が勝手に行っていることだからだ。だからこそ嘘をつくことによって、彼女たちの安らかな眠りが損なわれたりするようなことは―特殊な例外を別にすれば―まず起こらない(村上春樹「独立器官」『女のいない男たち』文藝春秋、2014年(初出2014年)、p164)。


 絵に描いたような「女ぎらい」(ミソジニー)です。ちなみに、成功した美容整形外科医である渡会の秘書は、ゲイという設定で、「同性愛嫌悪」(ホモフォビア)もきっちり書き込んであります。