村上春樹さん自身による「リトル・ピープル」

 「1Q84」の世界というのは、言うなればリトル・ピープルが地下から這い出してくる世界なんです。リトル・ピープルが何かというのは、僕自身うまく説明できないんだけれど、原始的な世界、地下の世界からのメッセンジャーだというふうに漠然と考えてもらえるとわかりやすいかもしれない(『考える人』、新潮社、2010年夏号、p.44)。


 物語に関していえば、僕にある程度わかっていることもある一方、よくわからないこともあります。一例をあげれば、リトル・ピープルはどういう存在で、彼らが何を目的としているのか、正確なところは作者である僕にもわからない。でも、僕はリトル・ピープルの存在をはっきり確信しているし、それが具体的にどういうものかはまだわからなくても、リトル・ピープルのいる世界がどういうところなのかはよくわかっています。作家にとってはそれがいちばん大事なことですよね(同上、p.56)。


クトゥルフ神話と近代的な邪神のイメージを創案したH・P・ラヴクラフト(1890-1937)自身は、無神論者で合理主義者でした。しかし、村上春樹さんは、「リトル・ピープル」の存在を本気で信じているようです。こうなると、もう「ハルキ教」ですね。