媒介としての女性―旧日本軍から企業戦士へ―

http://www30.tok2.com/home/maiken/%83%81%83j%83%85%81%5B/%88%C0%91S%81F%82g%82r.html より転載
ホモソーシャリティ=差別構造としての軍隊


 ホモソーシャリティは、二重の意味で性別、セクシュアリティによる大きな差別を前提としている。


 一つは、先ほども触れたように女性が、男性同士の結束のための媒介物でしかないということだ。例えば、歴史の中で往々にしてあった事実として、敵国に侵略した地で、兵士たちにその報償として侵略した地域の女性が「戦利品」としてあてがわれることはとても典型的なものだろう。その「戦利品」によって軍隊という典型的なホモソーシャリティな組織が団結し、維持され、兵士の気分を高揚させ戦争を行える国家を合法化する役割をも一定果たすことが出来るのだ。因みに、敗戦前、日本の皇軍兵士(日本軍)の志気の高揚をはかるため、軍中枢部は中国への侵略の際に中国人女性を侵略する村々でレイプすることを黙認していたし、戦時性奴隷制度としての従軍慰安所を奨励していた。また、アメリカ軍もアジア諸国でいくつもの戦争を経験しているが、その際に沖縄、韓国、あるいはアジア各国に基地と一緒に売春地帯を作り、兵士たちの戦場に向かう前のやり場のない怒りや不満を抑える役割を果たしている。まさに、ホモソーシャリティの原動力は、異性愛男性による「欲望」だったのだ。


 また、ホモソーシャリティの中にあっては、感情的であったり、女性に対して同情的であったり、女性的な振る舞いを極度に嫌悪する。男性が、感情をあらわにして泣いたり、弱音を吐いたりする度に、「女々しい[ママ]」、「いくじなし」となじられ、懲罰したり排除したりする。それは、「勇敢さ」や「男らしさ」、「強さ」と対照的に、感情的になったり「弱さ」を出すことは、男性同士の結束にとって危機や混乱を招くようにうつるからだ。そして、ホモソーシャリティにおいて、同性愛者やセクシュアルマイノリティは、それ故に嫌悪の対象となる。ということは、ホモソーシャリティによって形成された「欲望」が中心であり、その「欲望」にそぐわないセクシュアリティや男性が排除の対象となるのだ。


 その意味でホモソーシャリティとは、女性差別を前提とし、多様な性のあり方や感情の表出を否定することによって成り立っているマッチョで男性中心で異性愛中心の社会といえるだろう。


 さらに、異性愛中心の社会を構成させるために、家族、カップルといった生殖を前提とした性関係や性教育が国家的に行われる。要するに「お前はつがわなければ意味がない」というメッセージを生涯の中で嫌と言うほど吹聴され、「対」になることがおめでたくて、「個」でいることがおめでたくないのだ。当然にも、この関係は社会保障、会社の扶養手当など至る所で異性愛カップルが優遇されることにもあらわれている。このことについても詳しく触れたいのだが、紙面の都合によりここまで。


 現在のおおよその組織は、男性による権力主義的立場を維持するために女性が媒介とされ、同性愛者をはじめとするセクシュアルマイノリティが排除されるような前提条件があることはわかった。それに代わるような社会を作るにはどうしたら良いのだろうか?


* 「媒介としての女性」という発想は、旧日本軍から戦後日本の「企業戦士」へと引き継がれたように思います。