ボーイズ・ラヴ漫画18禁に断固として反対する

 ヤオイ文化を支持する女性たちについては、旧来の女性ジェンダー=女性性を生真面目に内面化している反面、「対等な対」への志向が強く、「対等な対」のあり方に思いをめぐらせる思考実験あるいは避難の場所として「男性同性愛」という形式が必要とされているのではないか、そしてそれは、伝統的なジェンダー規範を変容させようという傾向を媒介として、現実社会への潜在的な出口となっているのではないか、という実証研究がある(拙著「ヤオイ女性と百合男性が出会うときー親密性は変容するか」『男らしさという病?ーポップ・カルチャーの新・男性学ー』風媒社、2005年、p.72)。


 摂食障害のクライアントである女性たちの抱えている女性性をめぐる葛藤は、岩井が分析したヤオイ愛好者の抱えている女性性をめぐる葛藤と、程度の違いこそあれ、同じ性質のものであろう。両者はともに、生真面目に内面化した古い女性ジェンダー=女性性(例えば良妻賢母主義)と、自立=「対等な対」への要求=親密性への要求という新しい女性ジェンダー=女性性の間で葛藤しているのである。「ヤオイ=ボーイズ・ラヴ」というジャンルが日本の大衆文化に台頭してきたのと、摂食障害が女性の時代の病理として注目されるようになったのが、一九七〇年代後半というほぼ同時期であったことは、決して偶然ではあるまい。ヤオイ文化には、下手をすると摂食障害になりかねない女性たちのセーフティ・ネットとしての側面もあるのかもしれない(同上、p.79)。


*「違法な」性を描写することも少なくないボーイズ・ラヴ(女性向け男性同性愛ファンタジー)漫画の販売を規制して「18禁」にすれば、結果的に摂食障害に苦しむ患者を急増させることになるでしょう。古い考え方かもしれませんが、私は「アカデミック・オブリージュ」(職業的アカデミシャンの社会に対する義務)ということを信じています。職業的研究者として、私は今回の東京都青少年健全育成条例改正案に断固として反対します。