悪に強きは善にも強い

 こうした点に関連して次のような興味深い報告がある。筑波大学精神保健研究室の行ったアンケート調査によると、関東一都六県の精神科医療施設に来院した患者について、信仰によって「症状が改善したもの」と「悪化したもの」をわけると、そのいずれもが新宗教(特に新・新宗教)がもっとも多く、しかも症状を「悪化させる」宗派名と「改善させる」宗派名とを挙げさせると、それはいずれもピタリと重なったという。つまり「悪に強きは善にも強い」といった法則がこのような点についてもあてはあるのである。これは宗教がもつ二面性、すなわち、特に新宗教を中心とした信仰のあり方が、やむ面といやす面を同時にもつこと、そしておそらく、これら二方向のどちらかへ心を流動化させる力を有することを示していると思われる(大宮司信『宗教と臨床精神医学ー心の「やまい」と心の「いやし」ー』世界書院、1995年;pp.201-202)。