田母神元・幕僚長は「本当の男」か?

 ギャグ漫画家からもはやただの右翼言論人と化した小林よしのりさんが編集した、『日本を貶めた10人の売国政治家』(幻冬舎新書、2009年)の中で、女性の保守論客である長谷川三千子さんが、次のように発言しています。

富岡 田母神論文への政治家の対応も本当にひどかった。シビリアンコントロールとは軍の財政コントロールのことなのに、そのマジックワードを使って、政治家が自衛官の人事にまで介入した訳です。
長谷川 女性の立場から言わせていただくと、「本当の男」にコンプレックスをもつ男たちが持ち出すのが「シビリアンコントロール」という言葉の機がしますね。飛んだら命が危ない時でも平気で飛び立っていくのが、本当の男でしょう。男でない男たちは、そういう男に嫉妬する。それで、本当の男を引きずり下ろすためにシビリアンコントロールとか言う(笑)(同上、p.79)。

 いつの間に長谷川さんが「女性の立場」を代表できるようになったのか、私は知りません。それはとにかく、長谷川さんは、歴史家ジョージ・L・モッセが『男のイメージー―男性性の創造と近代社会』(作品社、2005年)で分析した「祖国・死・自己犠牲」という近代的イメージを「男のイメージ」となさっているようです。私は、自衛官という職業には敬意を払っています。しかし、私は田母神さんを「本当の男」とは思いません。

憂国忌に思う」 http://d.hatena.ne.jp/kkumata/20081125