夢の廃墟/廃墟の夢

―「ぼくはニヒリストを気取るほど楽天家ではない。しかし、希望を語るにはゴミと気心を通わせすぎた。」(安部公房「笑う月」初版1975年)
 安部公房(1924-1993)は、今で言う「廃墟萌え」の人だったみたいですね。日本社会の高度経済成長期にあっては、先駆的な感受性の持ち主だったと思います。進歩と調和というバラ色の「近代の夢」がとうに消え去ってしまったポストモダンの「夢の廃墟」では、人は「廃墟の夢」を好んで見るのかもしれません。