避難所としてのビジュアル系

雨宮 高校時代に、私は完全に症状をこじらせてしまって、普通の人間関係が築けなくなってしまいまし た。普通の友達は、裏切られるのが怖くてつくれない。唯一つくれたのはやっぱり追っかけ友達です。 自分と同じような境遇の子が多かったので。
  いまもそうなんですが、ビジュアル系バンドのファンって、なぜか手首に傷があったりするんです  よ。やっぱり親との関係が悪かったり家庭が複雑だったり、過酷ないじめに遭っていたりして。だか  ら、彼女たちとは何もいわないでもわかりあえるところがありました。
  何らかの傷を抱えている子たちが避難所のように集まるのが、ビジュアル系のライブだったんです。 そういうことが多かったので、そこでは人間関係を作れたんです。
萱野 いまの雨宮さんのゴスロリファッションもその流れですよね?
雨宮 そうですね。ビジュアル系の世界とか、暗い歌詞とか、ゴスロリファッションとか、病んでいる感 じはいまでもすごく好きです。そこがひとつの精神的な拠り所ですね。
萱野 リストカット摂食障害という組み合わせも多いですよね。
雨宮 そうですね。ただ私は、摂食障害にいかなくてよかったなあと思います。摂食障害って、すごくコ ントロールが難しいんですよ。何十年も摂食障害を抱えている人もいます。
雨宮処凛萱野稔人「『生きづらさ』について」光文社新書、2008年、p26)

ビジュアル系の世界には、アダルトチルドレンにとっての避難所としての側面があるのでしょう。