百合の音楽ーレベッカ「フレンズ」

 日本の1980年代を代表するロック・バンドのひとつであるREBECCAの名曲「フレンズ」(1985年)の歌詞を引用します。ドラマの主題歌などによくカバーされているので、殆どの人が耳にしたことがあるはずです。
 あなたが「男性」であり、この曲をいい歌だと感じるなら、あなたには見所があります。この曲で、「フレンド」が同性か異性かは明示されていませんが、私は同性(女性)だと思います。この曲は、最近のオタク用語でいう「百合」または「ガールズ・ラヴ」、つまり非ポルノの女性同性愛ファンタジーを歌ったものだと思います。「女性」の場合、多くの人が思春期の甘酸っぱい感情を思い出すでしょう。あなたが「男性」でこの曲に魅力を感じるとしたら、あなたはこの曲のヒロインたちの関係の潜在的な対等性に、「キャラ萌え」ではなく「位相萌え」しているのです(ここで「萌え」とは、「何かに魅力を感じること」と定義します)。
 あなたは、昔少年ジャンプで勝利の方程式とされた「努力・友情・勝利」をモットーとして「会社のため、家族のため」に生きろという近代的な男性規範を内面化しています。その一方で、「パートナーと対等でありたい」という願望、いわば「乙女回路」(本田透萌える男ちくま新書、2005年)をもっており、両者の間で葛藤を抱えています。両者の葛藤から「逃避」し、「対等な対」について「思考実験」するためには、「男性」という記号から離れて、「女性同性愛」という形式を必要としているのです。それが「非ポルノ」(キスぐらいまでなら可)でなければならないのは、男性向けの「レズもの」のアダルトヴィデオの消費者と一線を画したいからです