境界性パーソナリティ障害と親子関係の整理

 こうして新たなステップとして、現在起きている問題を、過去に体験してきたことにつなぎ直し、再統合する作業の段階を迎えるのである。その中心となり鍵を握るのは、親子関係の問題であることが多い。境界性パーソナリティ障害の人は、必ずといっていいほど、親子関係でつまづいている。そこに大きな根っこがあるのだ。行動面や対人関係の問題も、実は親子関係の歪みから、いつのまにか身につけてしまった偏りであるということが多い。過去の関係に戻って自分を再点検することで、さらに根本的な変化が起きやすくなる。
 思い出す場面を語る中で、さらには、絵に描いたり、文章で自分史や小説を書いたりする中で、親子関係を中心とした過去の体験が、十分に語られることが必要である。断片が、次第につなぎ合わさり、自分の物語ができていく。最初は救いのない苦難の物語だということも多い。傷つけられたことばかり噴出してきやすい。
 しかし、そうしたマイナス体験を表現し尽くすと、次第に逆転が起きてくる。つらかった体験ばかりでなく、プラスの体験も語られるようになるのだ。そうなってくると、ただ否定されていた過去は、現在につながる歴史として受け入れられるようになる。自分の人生に統合されてくるのである。
 そうした展開の中で、その人は自分の人生に新たな意味を見つけ出していく。転落と絶望の物語は、苦難と再生の物語へと変貌を遂げていく(岡田尊司境界性パーソナリティ障害幻冬社新書、2009年、p222)。


アダルトチルドレンの回復のプロセスと似ています。