境界性パーソナリティ障害の広がり
(前略)前述の社会学者ラッシュは、この流れ(熊田註;カフカの再評価やサルトルらの実存主義の小説の人気)の中でエドワード・オルビー、サミュエル・ベケット、ジャン・ジュネなどの当時の演劇界の前衛作家たちの取り上げた空虚感、孤立、寂しさ、絶望は、境界性パーソナリティ障害の「親密な関係への恐れ」「無力さ、喪失感、怒り」「破壊衝動への恐れ」といった特徴と共通のものだと述べています。近年、これらが芸術のメインテーマとして取り上げられることが少なくなっているのは、それが一般の人々の間に広がり、すでに芸術が取り上げるべき前衛ではなくなっているからだと思われます。しかしそれは、決して境界性パーソナリティ障害の問題が解決したということを意味していません。むしろこの現在においてこそ人々が本格的に取り組むべき一般的な問題となっていると捉えることができます(林直樹「監訳者解題」タミ・グリーン『自分でできる境界性パーソナリティ障害の治療ーDSMー4に沿った生活の知恵ー』誠信書房、2012年、p88)。
*全面的に賛成です。
「AC・よそ者・私とあなたー『見捨てられ』感覚をめぐって」
http://d.hatena.ne.jp/kkumata/20150915/p1