境界性パーソナリティ障害とジェンダー

 基本的には、この考え方(熊田註;BPDは女性特有の障害であるという考え方)はまちがっています。男性もBDP(熊田註;ボーダーライン・パーソナリティ障害)をもつ可能性がありますし、実際に発症します。研究結果によると、BDPをもつ男性は女性と同じ問題を抱えて苦しんでいますし、男女で同じような傾向が見られます。
 BDPは男性にも起こりうるのですが、BPDと診断されるのは女性のほうが男性よりはるかに多く、男性の約三倍といわれます。なぜこんな実例が出ているのかはわかりませんが、その理由がいくつか考えられます。
 一つは、少年と少女の育てられ方に関係している可能性があります。子どもの頃、感情的で、その感情をはっきり表現したり人間関係に頼ったりするのは女の子の性格だ、と教えられます。その結果、男の子はBDPを連想させるようなものとは異なる方法で自分の感情を表現したり苦しみに反応したりすることがよくあるのです。その結果、BDPとは違う診断をされることがあります。(中略)
 もう一つ、医師が女性をBPDと診断して、男性をほかの障害(例えば反社会的パーソナリティ障害など)と診断することが多いのは単純に、男女の固定的なとらえ方にあるかもしれません。(後略)(アレクサンダー・L・チャップマン&キム・L・グラッツ「境界性パーソナリティ障害に関する一般的な俗説」『境界性パーソナリティ障害サバイバル・ガイドーBPDとともに生きるうえで知っておくべきこと』星和書店、2009年、pp.60-61)


*先日の、高校生の嘱託殺人事件をめぐる報道でも、殺された少女については「BPDだったのでは」と報じられていますが、「救うために」殺した少年については、そういう報道はあまり目にしません。