虐待とパーソナリティの関係

 境界性パーソナリティ障害の人のなかには、成育中に性的虐待や身体的虐待を受けた人がいることがわかっています。
 しかし、これも発症につながる絶対的条件ではありません。虐待を受けたひとが、とくに高率で境界性パーソナリティ障害になるわけではありません。
 子どものころに虐待を受けたとしても、それを乗り越え、社会人として充実した人生を歩んでいる人もたくさんいます(林直樹(監修)『よくわかる境界性パーソナリティ障害主婦の友社、2012年、p37)。

 過去の出来事が原因であるなら、いまさらそれはどうにもできないことになる。それゆえ、自傷行為を養育期の虐待と直接結びつける考え方は、それを回復困難とみる悲観論を助長し、自傷者を養育期に守ってやれなかったという家族の罪悪感を刺激して自傷者を支える家族の力をそぐなどの悪影響を生じかねない。自傷行為への治療や対応を行う者は、家族が自傷者に不十分な養育しか提供できなかったから自傷行為が起きたといった単純な見解を一方的に当てはめてはならない(林直樹『リストカット自傷行為を乗り越えるー』講談社現代新書、2007年、p97)。


アダルトチルドレン運動における「被害者権力」の問題とも繋がる問題だと思います。