「宮本武蔵」に憧れる女性の心理について

ヤマザキ(熊田註;ヤマザキマリ
 さらに言うと、ジョブズ(熊田註;スティーヴ・ジョブズ)が面白いのは、自分で自分を慰める術を知っているというか自己完結できる人だったんですよ。私が『男性論』で取り上げたのは、そんな人ばっかりです。孤独に対する免疫力が強くて、誰かに認めてもらわなくても別に平気、一人で生きていける人たちです。ヘンに社会性を身に付けていない。
(中略)
萩尾(熊田註:萩尾望都
(前略)特に私がちっちゃい頃は、親が受けてきた教育のせいもあるけれど、女の人って「何かになる」ものじゃなかった。「何かの所属になる」ために育てられるんですね。だから、マンガと言わず、私が「何々がやりたいです」と言った時点で、もうブーなわけ。でも、そのことがなぜ叱られなければならないことなのかは、親に聞いても先生に聞いても分からないんです。
ヤマザキ
 周りがそうするんだから、あなたも合わせなさいっていう。
萩尾
 そうでした。だから、ジョブズさんのように、淡々と一人で生きていける人に対しては憧れがあります。私はそのことですごく、親や社会との衝突があったから(特別対談「ヤマザキマリ×萩尾望都萩尾望都対談集『愛するあなた*恋する私』河出書房新社、2014年、pp.231-232)。


*『宮本武蔵』が現代日本では男性よりも女性に人気があるのはなぜか、昔から不思議に思っていました。これは、腑に落ちる説明です。