モデルとしてのラテンアメリカ

見田(前略)いささか暴論めきますが、日本は前近代社会においては長く中国をモデルとし、近代社会ではイギリスついでアメリカとアングロサクソンをモデルにしてきた。近代後においてはラテンアメリカの文化がモデルになりうるのではないでしょうか。ラテンアメリカの文化の基本は、恋愛のみならず、同性の友人、仕事関係者まで含めた人間関係それ自体を楽しむことです。人間関係を楽しむには、あまり資源を浪費しないで済みます。
三浦(前略)
 いま若者の間に「シンプル族」とでも呼べそうな動きが生まれていると思います。とりわけ女性に多いのですが、車や服には関心がなく、欲しいのは人間関係。いろんな人と知り合い、面白い人と出会いたい。一緒にいて楽しい人と時間を過ごしたいし、自分も人からそう思われたい。
(見田) コンサマトリーな生き方とは、つまりそういうことです。いるだけで楽しいということ(見田宗介×三浦展「対談「進歩」が終わった世界を若者はどう生きるのか」三浦展『ニッポン若者論―よさこい、キャバクラ、地元志向』ちくま文庫、2010年(初出2009年)、pp.213-214)。


*見田さんは、時々いいこともいいます。もっとも、ラテンアメリカが「マッチョ」という言葉の発祥の地であることも、忘れてはならないと思います。