ギャルはどこにいった 

http://digital.asahi.com/articles/ASG5G4WN7G5GUHBI010.html?iref=comtop_6_06 より転載
ギャルはどこにいった eggもagehaも休刊相次ぐ


 ギャル系とされた女性誌の休刊が相次いでいる。時に奇抜な服装やメークで、同世代から一定の支持を集めてきたギャル。だが街を歩いても、そんなタイプの女性が目立たなくなった。彼女たちは消えたのか?
 「egg 19年と9カ月のキセキ」――。ギャル系雑誌「egg」は今月、次号予告で、月末発売の7月号を最後に休刊することを明らかにした。1995年創刊。日焼けサロンで焼いた肌と金髪、露出度の高い服といった、いわゆる「コギャル」と呼ばれた女子高生らにスポットを当て、ギャル文化発信の草分け的存在だった。先月にはやはりギャル系とされた雑誌「小悪魔ageha」が、発行元の事業停止で事実上の休刊になったばかりだ。
 「読む雑誌がなくなっちゃう」。学校帰りの東京・渋谷で都内の高校に通う椎名優さん(16)はこぼす。茶髪にカラーコンタクトを入れる自称「ちょっとギャル」。五つ上のお姉さんの影響で中学生のころからギャル系雑誌「Ranzuki」を読んでいたが、同誌は昨年12月号にリニューアル。その後は「egg」も読んでいた。ギャルのアイコンとして人気を集めたモデルの押切もえ益若つばさを輩出した雑誌「Pop teen」なども「今どきの清楚(せいそ)系に変わっちゃった。ギャルが読めるのが減った」。


■労働環境悪化、「まじめ」化の波


 そもそもギャルとは何か。「ギャルと不思議ちゃん論」の著書があるライターの松谷創一郎さんによると、90年代後半、一部の女子高校生が露出度の高い格好をするなど「過激」化し、「コギャル」と呼ばれ始めたのが由来だという。
 ただ、その特徴は「男性視線の攪乱(かくらん)。露出は男に向けてではなく、自分の仲間にかっこいいと思われたいから。だから男が下品で嫌と思っても関係なかった」。だから、肌を真っ黒に焼き、目の周りを白く塗るヤマンバギャルのような「かわいさ」度外視のスタイルも生み出された。
 こうしたギャル路線が廃れてきたのはなぜか。雑誌に詳しいライターの中沢明子さんは「ニーズの『まじめ』化」を指摘する。「労働環境が厳しくなり、例えば大人に『ダメ出し』されると、就きたい職も得られない。自分は『ちゃんとしたい』という願望が強まっている。雑誌もニーズに合わせて、路線を変えているが、雑誌全体の売り上げが厳しいなか続けられない雑誌も出てきている」という。
 若者の「気分」の変化は、ギャル文化の代名詞的な存在である「プリントシール」機にも表れている。
 企画・製造する「フリュー」(東京都)は2011年夏の新機種以降、従来のギャル系モデルに代わって、雰囲気を変えるため主に海外モデルを起用し、プロの写真家に撮影されたような質感や仕上がりの高級感を打ち出したところ好評だという。これまでは目を大きくしたり、体形を細く見せたりできる機能が人気だったが、「利用者の好みが変わったと感じる」と担当者は話す。
 いま、女性誌には「男の子のいいね!って意外と○○」「どっから見ても愛され顔メーク」といった見出しが躍り、男性目線を意識したスタイルが目立つ。


■男性目線気にしない精神は不変?


 一方で、かつてのギャルたちに見られた「自分たちの世界」を重視する意識も、形を変えて受け継がれている。12年創刊の「LARME」。一見女性らしいファッション誌だが「イケメン」俳優のインタビューも、「モテ」といったキーワードも出てこない。
 中郡暖菜編集長(28)は元「小悪魔ageha」の編集部員。「かつてのギャルは男性の目を気にせず、自分たちだけがわかる時代の最先端を生み出していた。外見のトレンドは5年くらいで変わるけど、若い女の子の精神的なところは変わらないと思うんです」(高久潤)


田中美津さんが、「男性目線気にしない」という点で、ギャルはウーマン・リブの継承者ではないか、という意味のことを言っていたと思います。ギャル系雑誌が廃刊になっても、「きゃりーぱみゅぱみゅ」に見られるように、そういう精神は継承されていると思います。