精神症状・身体症状・行動上の症状の「症状移動」

 ところが最近は、精神症状と身体症状という二元に加えて、もう一つ(社会)行動上の症状という次元が加わって三つ巴になった。自殺企図、ギャンブル、嗜癖、性的逸脱、盗み、過食・無断欠勤、登校拒否、家庭内暴力、その他、種々の退行的行動はまたしても繰り返される特徴がある。しかも、決して(想像されるような)社会不適応者におこるのではなく、心身症神経症レベルの軽い障害の人にみられる。かくていわば心身というだけではいかなくなった。社会的存在としての人間も含めて、より全体を神経症学と心身医学が共同して志向していくのは、むしろ望ましいことだろう(笠原嘉「神経症学からみた心身医学の位置づけ」『外来精神医学という方法』みすず書房、2011年(初出1984年)、p45)。


*「症状移動(シンプトームシフト)」は、宗教者も心得ておくべき問題でしょう。