サリヴァンと前思春期

 サリヴァンによれば、前思春期とは「静かな奇蹟」、つまり、ある特定の相手の満足と安全保障感が自分のそれと同等の重要性をもつという意味での「愛」の能力の開花がみられる時期である。この時期までの子供はすべて自己中心的なものである(愛他的な子供は身を滅ぼすのが道理である)。「愛」の初期の形態は同一視できる相手を対象とするので、同性同年輩の相手が多い。「愛」の能力が芽ばえると、恥をかく恐れなしにものごとをきき返すことなどができるので、「共人間的有効妥当性確認」が急速に進む。つまり、愛の対象は、安全脅威感を起こさせず、逆に満足の達成を援助してくれる。自由な自己表現が可能となり、両親を再評価でき、人格が拡大し、美的世界に目がひらけ、共通の人間性の存在を識る(中井久夫サリヴァン統合失調症論」『「思春期を考える」ことについて』ちくま学芸文庫、2011年(初出1975年)、p311)。


*鋭い指摘だと思います。