村上春樹氏のジャズ評論

 私は村上春樹氏の文学を全否定まではしません。デビュー当時、「風の歌を聴け」には感心して、当時のガールフレンドと映画まで見に行ったものです。ましてや、私は村上春樹氏のジャズ評論は全否定しません。セロニアス・モンクを「謎の男」と評したり、ウィンストン・マルサリスを「ジャズのテクノクラート」と評したりするのは、さすがに上手いな、と思います。しかし、彼のスタン・ゲッツ礼賛にはついていけません。ゲッツがレコーディングのたびに必ずヘロインを打っていたことについて、村上氏は「また別の感慨がわき起こる」としていますが、私は「そういえばビョーキっぽい音だな」と思うだけです。村上氏の病み方は、相当に根の深いものなのでしょう。