選択的退却症

 選択的退却症というカテゴリーで、中学生の登校拒否から大学生の長期留年者、そして若いサラリーマンの脱サラ志向までをひっくくることを、かねがね(但しおそるおそる)私は提案しているのだが、果たしてあたっているであろうか。なおこのカテゴリーにあてはまる診断名がDSMのなかにないかと思って探すと、DSM-Ⅲ(1980)とその改訂版(1989)には、「アイデンティティ障害」という項目があった。しかもこれは「児童と青年」の章にあるものの、「成人の場合に使用してもよい」という但し書きがあったので便利だった。ところがDSM-Ⅳ(1994)ではこの項目がなくなってしまった。上にも述べたように、彼らは自分から助けを求めてやってこないから、実勢より軽視されるのではないか。
 この頃は、あまりDSMを気にしないで「引きこもり」とか「社会的ひきこもり」という日常語が正式の術語のように乱れ飛ぶ。これを喜ぶべきか、どうか(笠原嘉『精神科における予診・初診・初期治療』星和書店、2007年、pp.117-118)。


「日本の宗教と『斜めの関係』ー天理教と脱ひきこもりー」
http://d.hatena.ne.jp/kkumata/20120327/p1


 精神科医やセラピストの声が大きすぎる社会は、健全ではないと思います。