治療文化のなかの心理療法

 で、掃除のおばさんだった人たちがね、「(熊田註;九大精神科の)先生たちは新しい治療法(熊田註;心理療法)をいろいろ考えついて、それでいい論文を書いて偉うならしゃった」「だけどね、みんな、私たちが下で助けとったから治療がでけたんだよ」と言うんだ。「それはどうして?」って聞いたらね、「どの治療をしているときも、患者さんは『この治療はつらい』『もうしたくない』『耐えられん』と言って、泣いてきた。そのときに、私たちが握り飯を作って、漬け物をつけて、『これでも食べて頑張んなしゃい』と言うて、そうしてまた治療が続けられた」と(神田橋條治「震災ボランティアに聞いた」『神田橋條治/精神科講義』創元社、2012年(初出2011年)、pp346-347)。


*「心の専門家」が見落としていそうなことです。