大震災と「心のケアチーム」

http://mytown.asahi.com/yamanashi/news.php?k_id=20000001104130002 より転載
 県の「心のケアチーム」の一員として東日本大震災の被災地を訪れ、被災者の精神的なケアにあたった精神科医で都留児童相談所長(派遣当時は県立精神保健福祉センター所長)の近藤直司さん(48)に、現地の様子や課題、私たちが出来ることを聞いた。


 ――被災地での活動は


 「3月25日から4泊5日で宮城県に入り、多賀城市七ケ浜町などで認知症のお年寄りや急性錯乱の20代の男性に対応した。その後、子どもと大人のトラウマや支援疲れについて保育士向けに研修をした」


 ――現地を訪れて感じたことは


 「阪神大震災能登半島地震に続いて3度目だが、今回はとにかく被害が大規模。まずは救急医療やライフラインの問題が大きく、心のケアはこれから。一番深刻なのは、親を亡くした子どもだ。家族が行方不明や亡くなったということをまだ伝えていない人も多い。援助にあたる人も被災者なので、その人たちをどう支えていくかも考えなければいけない」


 ――研修で何を伝えましたか


 「集まった15人くらいの保育士に、子どもに起きる反応を説明した。普段は元気な子がすごくびくびくしている様子を見て、安心できる環境を子どもに提供できるかを心配していた。中には家が流された保育士さんもいた」


 ――支援する側として見えてきた課題は


 「福島や岩手の一部では行政機能が崩壊したところがかなりある。東北の人は本当に我慢強い。僕たちにも気を使い、もてなそうとする。地元の人がいけば違うので、身近な援助者を再起させることが大事だと思う」


 ――そのためには、具体的に何が必要ですか


 「全国から1カ月2カ月という単位で行政職員を派遣すること。山梨県からも継続的に心のケアチームの派遣が続く予定だが、どこか1カ所に定着すれば住民との距離が近くなり、心の内を語ってもらえるかもしれない」


 ――原発事故の問題も続いています


 「福島をはじめ、放射能に対する恐怖心は住民にも支援者にも強い。差別や2次被害などの問題を研究しながら、早急に対応しなければいけない」


 ――被災地以外でも様々な心の影響が出ています


 「繰り返し悲惨な映像を見てトラウマを負ってしまう子どもがかなりいると全国の専門家が指摘している。すごく怖がる、落ち着かなくなるなど、間接的なトラウマ反応が起きている。子どもも大人も、できるだけ安心できる環境を整え、時間がかかることを承知で支え合っていくことが必要だ」


 ――山梨にも県外から多くの人が避難しています


 「まずは衣食住という生活基盤を保証する。被災者は『自分だけ生き残った』『自分だけ逃げた』と罪悪感を持ってしまう人が多い。そんなときは『あなたのせいではない』と周りの人が繰り返し言ってあげるしかない」


 ――いま、私たちに出来ることは


 「現地に入って支援することも大事だが、被災者が安心できる受け入れ態勢を整えることも重要。自治体の役割が問われる。市町村合併で行政単位が大きくなり、住民の顔が見えにくくなっている。行政と住民の身近な関係をどうやって築いていくのか、真剣に考えなければいけない。山梨だって、いつ助けてもらう立場になるかわらからない」(聞き手・佐藤美鈴)


*「心のケアチーム」を「どこか1カ所に定着」させる必要があるのなら、「地元の宗教団体」に任せるべきではないでしょうか?日本の精神科医は、よほど宗教者を信用していないようです。