宗教と「疾病利得」

 篠田寛一(1911−1988)の著作・『それでよろしいか』(道友社文庫(復刊シリーズ)、2011年(初出1962年))を読了しました。天理教では、布教体験記の名著とされています。終戦後の混乱期に、彼が中下層階級の病人(特に肺結核の患者)だけではなく「ならず者」や「ヒロポン中毒者」も多く入信させていたことがわかりました。興味深かったのは、病人、特に精神病の患者を相手にする時には、彼はまず身近な家族を説得して入信させ、改心させていたことです。これは、病気、特に精神病が患者に何らかの「疾病利得」をもたらしていた場合には、病人の治癒に現実的な効果があっただろうな、と思います。