若者に急増「自己愛型人間」

http://news.mixi.jp/view_news.pl?media_id=77&id=1410972 より転載
若者に急増!責任転嫁にする「自己愛型人間」の直し方


■自分がこうなったのは誰かのせいなの!?
 最近、不運を誰かのせいにすることで、自分を守ろうとする若者が増えていると言われています。
 虐待やいじめのように、ひどい扱いを受けてきた人が「親のせい」「友だちのせい」と他責感を持つのは無理もないことかもしれません。しかし皮肉なことに、このように本当にひどい被害を受けている人ほど、「私が悪いからだ……」と自責感にかられる傾向にあり、逆に恵まれた状況に置かれている人ほど、不運の責任を他人や社会、環境になすりつけてしまう傾向があるようです。
 他責感の強い若者は、事実に即した冷静な自己分析ができない状態に陥っています。「こんな親から生まれなければ、もっと成功できたのに」「就職活動がうまくいかないのは、出身大学の馬鹿な学生が足を引っ張ってるからだ」---こんな口ぐせの多い若者に共通するのが、「自分は悪くない」という強い自己愛の信念です。
 なぜこうした「自己愛型人間」が増えてしまったのでしょうか?
■自己愛型人間が増えたわけ
 自己愛型人間が増えたことには、いくつかの要因があると思います。なかでも少子化の影響から、親や祖父母、おじやおばから愛情を一身に受け、甘やかされている若者が多いという事実が挙げられるでしょう。
 博報堂(2006年)の調べによると、今や1人の子どもが持つ平均ポケット(お金の出所)数は約7つ。つまり、父母、両方の祖父母、おじやおばなどを加えると平均7人くらいから、お小遣いやプレゼントをもらえる、ということです。
 記念日には抱えられないほどのプレゼントや大金をもらい、ねだればすぐに行きたいところに連れて行ってもらえる……こんな状況が当たり前になると、与えられることに感謝の気持ちを持てなくなります。我慢する体験、努力して手に入れる体験も持てなくなります。
 また、幼いころから成功神話に煽られて育つ若者が多いことも影響していると思います。勉強ができればわがままが通る、お金持ちの子は何をしても許される -----特別扱いが許される環境で育つと、成功するごとに自己愛が強くなります。ところが一歩社会へ出れば、自分の限界や努力ではどうにもならない理不尽さに直面します。そのとき、自己愛が強い人ほど完全ではない自分を受け入れられずに、成功を煽ってきた親や周囲への恨みが強くなります。
 また、自分と同じように他人にもかけがえのない人生があること、自分はたくさんの人の支援のもとに生きているということが実感できないような環境で育ってきた場合、やはり自己中心的な思考と行動が増えて自己愛傾向が強くなってしまいます。
■パーソナリティ障害、うつ病の可能性も
 自己愛は、逆境で自分を守るためには大切な価値観でもあります。他人のせい、社会のせいだと思っていれば、自分を責めることはなくなるからです。しかし、自己愛が強いゆえに精神的な病気になってしまうこともあります。
 一つは、自己愛性パーソナリティ障害。これは自分が特別で賞賛に値する人物だと過剰に思いこみ、他人への共感性に乏しく、自分のために他人を平気で利用したり、傲慢な態度で他人に接するパーソナリティ(人格)の障害です。
 また、最近問題になっているのが、若い世代に多い「新型うつ病」(現代型、ディスチミア親和型、非定型など)と呼ばれるタイプのうつ病です。
 従来、うつ病は真面目で几帳面、自責感が強いタイプの人が自分を追い込んだ(もしくは追い込まれた)末になる病気と言われてきました。一方で、仕事はやりたくないのに趣味には熱中したり、「こうなったのは会社のせい、親のせい」と他責感を持って抑うつ的になるのが、若い世代に多い「新型うつ病」です。強すぎる自己愛、自己中心性のゆえに、周りを責めながら憂鬱感が強くなってうつ病になってしまうのです。
 従来型のうつ病の場合、薬物療法を続けながらゆっくり休養をとり、自責的な認知を変容させることで回復していきますが、この新型うつ病の場合は社会の常識や規律のある生活に慣れさせ、自己中心的な認知を変容させるという正反対のアプローチが検討されます。
■自己愛型人間が変わるためのポイントとは?
 病気とまではいえないが、自己愛が強すぎるがゆえに合理的に生きられない場合には、本人の努力で変わっていくしかありません。それには、次のようなことをお勧めしたいと思います。
1) 人の話を聞く訓練を受ける
 自己愛が強い人は、他人をありのまま認めて共感する、といった習慣が身についていないことが多いのです。したがって、人の話を最後まで聞く「傾聴」や、グループワークを総括する「ファシリテーション」の訓練を受けてみるといいでしょう。
 うつ病や自殺の増加、人々の価値観の多様化によって、傾聴とファシリテーションは近年とても注目されています。ビジネスのセミナーや地域の市民講座などでも、気軽に受けられます。ただし、1回だけではなかなか理解できないので、数ヶ月に一度でも継続的に受講することをお勧めします。
 傾聴の基本は、「まず人の話を最後までまるごと聞く」ということ。ファシリテーションは、グループの人がそれぞれ忌憚ない意見を言い合いながらも連帯感を持てるよう、グループワークの進行役をすることです。最初は大変ですが、慣れてくると人には様々な価値観があり、色々な境遇の人が真剣に考えて人生を送っていることが分かります。それを知ることが、自分の自己中心的な思考や行動を振り返るきっかけになるのです。
 ただし自己愛型人間が、最初から傾聴講座やファシリテーション講座に興味を持つ可能性は少ないでしょう。その場合は周囲がきっかけづくりをするといいのです。「傾聴のテクニックを知るとモテるようになるらしいよ」「ファシリテーションの勉強しておくと就活でアピールできるんだって」というように、自己愛をくすぐる一言を投げかけて誘うのがポイントです。
2)気持ちを思いきり話す、気持ちをまるごと聞く
 自己愛型人間と接する人は、その身勝手さにいつも振り回されています。しかし、そこで周りが我慢してしまうことが自己中心性を助長させ、結局は「裸の王様」にさせてしまうのです。
 そこで、自己愛型人間と常に接している人は、イヤな気持ちになったときに何が自分を不快にさせているのか、気持ちをしっかり伝えることが大事です。「そういう勝手な態度はすごくイヤ」「ずっと我慢してきたけど、今日こそ言う!」というように、勇気を持って自分の気持ちを伝えることです。
 そして、相手からの反論も聞きます。「俺がこうなったのはお前のせいだ」「俺が悪いんじゃない、社会が悪いんだ」というように自己愛的な言葉が続くでしょう。しかし、それもまずはしっかり受けてまるごと聞きます。その上で自分の意見も言います。
 このように、しっかり話してしっかり聞く、というやりとりをまず一度は徹底的にやってみること。心にあるモヤモヤは話すことですっきりし、その後は冷静になれるはずです。これを何度かやれば、気持ちが通い合うチャンスがやってくるはずです。
3) 「愛のあるつき離し」を
 自己愛型人間には、与えられることが当たり前の環境で育ってきたため、感謝の気持ちが足りません。そこで、与えてきたものを断つことも大切です。たとえば親なら、成人した子どもなら、親の家事サービスをストップする、家賃と生活費を徴収する、1人暮らしをさせる、といったことから始めるといいでしょう。
 責められても、揺らがないことです。確かに子どもの自己愛を助長させるきっかけを作った責任の一端は親にあるのかもしれませんが、親もよかれと思って真剣に育ててきたのです。生み育て、不自由のない生活をさせてきた親自身の努力に、もっと自信と誇りを持つべきです。つき離しによって当面支障が生じるかもしれませんが、荒れた先に本人が気づいて自分で生活を立て直すことを信じて待つしかありません。
 このときはただつき離すのではなく、成り行きを見守ることです。第三者への協力の依頼も必要です。本人が信頼するおじやおば、学生時代の教師やコーチなどに相談相手になってほしいとお願いしてみるといいでしょう。また、ひきこもりなどのケースは若者自立支援団体に相談してみるのも一案です。1人にならず、常に相談できる人がいることが、前向きな自己改革につながります。
【ストレスガイド:大美賀直子】