現代日本における「いじめ」の蔓延

毎日jp」6月26日版より転載


 「誰もが加害者にも被害者になり得るのがいじめ」−−。文部科学省国立教育政策研究所は26日、小中高校の教員向けに作成した研修用資料「いじめを理解する」を公表した。インターネット上のいじめなど、大人の目からは見えにくい形態のいじめが増えていることなどを踏まえ、「問題を起こしそうにない普通の子」にも広く注意を払うことを求めている。

 いじめについての教員自身の認識をチェックする「自己点検シート」と、04〜06年の3年間にわたり小中学生約1400人を追跡した調査結果などで構成。自己点検後、最大7人の教員グループで対策を話し合う校内研修の実施を促している。いじめに関する研修資料を文科省が作成するのは初めてで、来月までに全国の学校などに配布する。

 調査結果から「特定の子がずっといじめられたり、いじめ続けるケースはむしろ少なく、被害者も加害者も時期により大きく入れ替わっている」と指摘。特に「仲間外れ、無視、陰口」などの行為は8割を超える児童生徒が被害を経験し、加害者になった経験も同様に8割に達しているとのデータを示し「大人から見て気になる一部の子にのみ注意を払っていると対応が後手に回る」と、意識改革の必要性を訴えている。

 また、「互いが納得しているように見えたり、軽いふざけにしか見えないようないじめもある」と注意喚起し、頻度や程度にかかわりなく、加害行為を決して許さない姿勢▽ネットいじめに関しては専門家の力を借りる▽他者を傷つけたいという欲求を抱かせないよう、社会性をはぐくむ取り組み−−などを求めている。

 文科省は06年度にいじめの定義を拡大。以前は(1)一方的(2)継続的(3)深刻な−−の3要件を満たす場合に限っていたが「一定の人間関係のある者から心理的・物理的な攻撃を受けたことにより、精神的な苦痛を感じているもの」と改めた。【加藤隆寛】