新世代の当事者研究

 全く自分でも呆れるほど我が儘勝手な研究生活を送ってきましたが、学者としては成功した、と思います。一般論ですが、研究者の育成においては、教師が優秀すぎると、学生はかえって伸びないものです。学生が、教師との学問的力量の差に絶望したり、同じことですが、教師に対して過度の依存心を抱くようになってしまうのです。私の教師は、東京大学島薗進先生(現・日本宗教学会会長)ですが、学問的力量は、私とでは比較にもなりません。教師との圧倒的な力量差にもかかわらず私が成功したのは、「自分にとって切実な問題しか掘り下げない」という「新世代の当事者研究」(上野千鶴子さんの拙著「男らしさという病?」に対する評)に徹したからでしょう。私のたいへんな我が儘勝手さが、研究者としては吉と出た格好です。