我としての意地

 「意地」を張っている人には、自己中心性と視野狭窄がつきまといます。意地は、新宗教でよく「捨てねばならない」と説くところの「我」です。精神科医中井久夫が指摘するように、意地は、本来は非常事態を乗り切るための心理であり、わずかに無冠の弱者にのみ許されるものです。しかるに、現在の日本文化は、「男の意地」、特に「強者の意地」に寛容すぎます(「男性」であるだけでも制度的には「強者」なのですが)。近代日本の男性が、「わがままで甘ったれ」になりがちなのは、そのことと深く関係しています。