SEAMOとビンタ一発分のフェミニズム

 前回に続いてSEAMOネタです。私のジェンダー/セクシュアリティ論の授業を聴いていた学生らしく、SEAMOジェンダーに自覚的だと思います。オフィシャル・HPでは、好きなマンガとして北斗の拳・男塾・魁男塾・男樹・天地を喰らうサラリーマン金太郎・クロカンを挙げており、好きな言葉としては、北斗の拳の中の「退かぬ媚びぬ顧みぬ」というセリフを引用しています。一見、現代日本社会の「男の中の男」のイメージを愛しているかのようです。しかし、SEAMOは同時に「男の中の男」のイメージに自分でツッコミを入れて相対化する醒めた視点を併せもっています。SEAMO人気をブレイクさせた「マタアイマショウ」「ルパン・ザ・ファイアー」や佳曲「心の声」のPVでは、「男の優しさ」や「男の意地」を歌いながら、女性に思いっきりビンタを張られています。

「マタアイマショウ」http://jp.youtube.com/watch?v=NTIvQDSpoW8
「ルパン・ザ・ファイアー」http://jp.youtube.com/watch?v=BF78ReJkLu4&feature=related
「心の声」http://jp.youtube.com/watch?v=nBTw0GEa_U4

 SEAMOは、現代日本における「男らしい男」の身勝手さや女性に対する甘えをきちんと自覚できていると思います。言い換えれば、SEAMOの音楽には「ビンタ一発分のフェミニズム」が入っています。そこが、凡百のマッチョを誇示するだけのラッパーたちとひと味違うところです。股間に天狗の面をつけるパフォーマンスもするSEAMOのコアなファン層は、「私エロいの好き」とさらっと言えるようなポスト腐女子の10代女性だと思いますが、よく理解できます。