大学教員と「研究嗜癖」

 私は若い頃は「軽症境界例」だったと思います(今はさすがに「病い抜け」していると思いますが)。しかし、こういう人がなりがちな「(アルコール)嗜癖」にはなりませんでした。理由は、研究者になったからでしょう。良い論文が書けたときには、脳の報酬系が活性化され、脳内麻薬物質が分泌されていると思います(私の場合、そういう機会は1年に数回だけですが)。その時の快感は、アルコールによる酔いをはるかに上回る強烈なものだし、頭の中で何度でも反芻できます。それを「研究嗜癖」と呼べばそれまでですが。一般に大学教員には「ヘンな人」が多いのに、「(アルコール)嗜癖」が少ないのも、おそらく同じ理由によるものでしょう。

『寄生獣』映画化について

 映画『寄生獣』、やっぱり見にいかないことにしました。私は岩明均の原作マンガの熱烈なファンで、マンガのネームを丸暗記しているほど何度も読み返しています。原作があまりにも傑出した作品なので、多少映画化の手法がマズくても、一定の出来映えにはなるでしょう。ネット上の映画評価も、そこそこにはいいようです。しかし、映画監督が『永遠の0』を撮影した山崎貴だということが気にくわない。
 SF作家のP・K・ディックには“writing philosopher”という評価があります。マンガ『寄生獣』にも、「哲学のエンターテイメント版」としての側面があります(ちなみに、岩明の父親は哲学の大学教授)。しかし、映画監督が山崎貴では、原作マンガの「思索の深み」には手が届かないと思います。


ー「心に余裕(ヒマ)のある生物(熊田註;人間のこと)、何て素晴らしい!」