「欠落人間」だった椎名林檎

 久しぶりに椎名林檎のデビュー・アルバム『無罪モラトリアム』を聴いてみたら、彼女はスリーヴで自分のことを「欠落人間」と称していました。精神分析家・バリントがいうように、「基底欠損」(Basic Fault、精神医学でいう境界例と重なることが多い)の治療の目的が、「欠損をかつてもっていたことを受容し完全治癒を断念すること」であるなら、椎名林檎はデビュー時からすでに「治癒」していたのでしょう。