プレ成人期

 しかし三十歳まで青年期を延長するとなると、当然新しい青年期区分がいることになろう。十三,四歳から三十歳をもちろん等質の青年期とみるわけにはいかないから、従来慣用の青年期前期(アーリイ・アドレッセンス)、青年期後半(レイト・アドレッセンス)という区分に、私はもう一つプレ成人期またはヤング・アダルト(若い成人)期という新区分をくっつけてはどうかと思う。具体的にいうと、十三,四歳から十六,七歳を青年期前期、十七,八歳から二十二,三歳を青年期後半、二十二,三歳から三十歳前後までをプレ成人期としたい。このような区分を提唱する根拠は、だいたい一定の精神病理像が右の年齢区分内で消長を示すからである。どういう病像がどういう消長を示すのかは専門的になりすぎるので省略するが、ただ二十二,三歳という、いうならば大学卒業前後の年齢で私が青年期後半とプレ成人期を区切ろうとするのは、この年齢から成人型の単相うつ病分裂病(ママ)の妄想型が多発してくるという臨床的事実によっていることだけは申し添えたい(笠原嘉『青年期ー精神病理学からー』中公新書、1977年、pp.200-201)。


*「プレ成人期」は上手いネーミングだと思います。「青年たちには今までに例のない長い「不決定」を生きるしぶとさを、成人には自分たちの時代よりずっと気長に青年たちの「熟成」を待つ雅量を求めたい」(同上、p226)