スイスでバトラー叩き

http://irorio.jp/yasumyg/20141117/178828/ より転載
ジェンダー思想家ジュディス・バトラーへの名誉博士号に、スイスで抗議運動


性意識の解放を唱えるジェンダー理論家への名誉博士号授与により、スイスの大学で保守派による抗議運動が巻き起こっている。


現代を代表するジェンダー理論家にスイスの大学が名誉博士


ジュディス・バトラーといえばカリフォルニア大学バークレー校教授にして現代を代表するジェンダー理論家の一人。「性差」は生物学的に決定付けられたものではなく文化的・社会的に構築されて行くもの、というフェミニズムの思想を推し進めると共に、それが前提としている男/女という二項対立の自明性そのものを否定。そして自身も同性愛者であると公言する彼女は、性愛をめぐる正常/異常という対立もまた断固として拒否する。
この高名にして挑発的な思想家に対し、スイス・フリブール大学哲学部は今月中旬に名誉博士号を授与すると告知。そしてその授与に先立ち14日、大学講堂にて彼女による「暴力なき抵抗」をテーマとした講演を企画した。


保守派キリスト教徒からの激しい反発、学内からも


ジュディス・バトラー名誉博士号」の知らせは同地を中心に激しい反発を呼び起こすことになった。反発の主な出どころは保守派キリスト教徒。自然的な性差に尊厳を認めぬバトラー氏の主張は神の創造を冒涜するものであり、また伝統的家族秩序を損なうものであるがゆえに許容できぬ、というわけだ。
そしてなんといっても問題は、博士号を授与する当のフリブール大学がスイスにおけるカトリック神学の拠点であるということ。神学部には抗議のため学位授与式欠席を表明した教授もいる。同大学学長のギド・フェルハウウェン氏もまた神学者であり、学長としては「名誉学位の授与は各学部の問題である」と公言しながらも、同地のラ・リベルテ紙には「この授与への賛同を口にした者は、神、そして本人の良心と学問的理性の前で、自分自身を弁明する必要があります」とコメントしている。


厳重な警護の中、講演は大盛況


そして14日のバトラー氏による講演の晩。会場席が学生たちに埋め尽くされる一方、扉の外には反対派が大挙する。講演自体はジェンダーをテーマとしたものではないにも関わらずである。不慮の事態を避けるため扉は固く閉ざされた。扉は講演中、締め出された抗議グループにより何度も揺さぶられた。
事情を知るバトラー氏は次のような言葉で講演を始めた。「皆さんからの抗議のため、まず持ち時間から2分差し上げます。それからお話に入りましょう」。講堂の学生たちはこのユーモアに拍手喝采。講演後はスタンディング・オベーションで彼女を讃えた。


対抗イベントも、効果は…?


一方、抗議運動の主催者であるキリスト教徒団体「夜警(Les Veilleurs)」は同日、対抗策として大学前でホットワインを振る舞い聖書の詩節を朗読する催しを行った。
が、こちらはバトラー氏の講演のような熱意ある反応を得られなかった様子。名誉博士号授与にストップは掛けられずじまいのようだ。