フェミニズムとマイナー文学

 マイナーの文学の第二の特徴は、全てが政治的だということである。これに対して《大》文学においては、(家族・結婚生活などの)個人的な事件は、社会的な場が環境・背景の役割をしている、それに劣らず個人的な他の事件と結合する傾向がある。(略)マイナーの文学はこれとはまったく異なっている。その小さすぎる空間は、ひとつひとつの個人的な事件が直接に政治に結びつくようにさせている。したがって個人的な事件は、まったく別の歴史がそのなかで働いていれば、それだけ一層必然的で、不可欠で、顕微鏡によって拡大されたものになる(ジル・ドゥルーズ&フェリックス・ガタリカフカーマイナー文学のためにー」法政大学出版局、1978年;pp.28-29)。


在日コリアンを名乗る辛淑玉さんのフェミニズムにパンチ力があるのは、「個人的なことは政治的なこと」というラディカル・フェミニズムの主張を、少数民族としてより強く実感しているからでしょう。アメリカで、ユダヤ系にして男性型レズビアン(ブッチ)であるジュディス・バトラーフェミニズムが強い社会的影響力を持ち得ている理由の一つは、バトラーが少数民族の一員だということにあるのでしょう。