境界性パーソナリティ障害の治療

(前略)治療の目標は、「欠損をかつてもっていたことを受容し完全治癒を断念すること」にある。
(中略)実際、基底欠損の患者とは、しばしば境界例あるいは境界例的な患者であって、この概念はそれらの治癒に資するところが少なくない。しかし、「魚を支える水のごとくあれ」という治療指針は欧米よりもわが国のメンタリティに受け入れられる傾向があるやもしれず、(熊田註;精神医学者バリントの著作の)邦訳はこの種のものとしては例外的に版を重ねている(中井久夫「基底欠損」『隣の病』ちくま学芸文庫、2010年(初出1991年)、pp.58-59)。


*日本における境界性パーソナリティ障害の治療やアダルトチルドレンの「回復」を考える上で、示唆的な指摘です。治療の目標が「完全治癒を断念すること」というのは、はっきり言ったな、と思います。北野武の言動、特に映画『菊次郎の夏』が想起されます。