主体は名誉、客体は恥ー光市母子殺害事件について

 光市母子殺害事件について、被告弁護団が再審請求したそうです。私は、この事件に関しては、被告の犯行時における実年齢は18歳を過ぎていても、精神鑑定で「発達障害のために精神年齢は5,6歳」とされた以上、少年法を適用して死刑は回避し、判決は無期懲役が妥当だと思っています。その意味で、再審請求には賛成です。しかし、「殺意はなかった」という弁護団の主張には首をかしげてしまいます。被告は、父親からは身体的虐待を、母親からは性的虐待を受けて発達障害を悪化させていました。「少年への性的虐待」は、単にトラウマとなるばかりではなく、被害者に「恥」(shame)として受け取られます。なぜなら、近代社会における男性のセクシュアリティは「主体は名誉、客体は恥」ということが基本だからです。被告は、無意識のうちに「恥」を乗り越えて「男になる」ために、殺人・屍姦に及んだ可能性があります。被告が、獄中からの手紙で「俺も男だ」と述べていることが気になります。