光市母子殺害事件と性的虐待(続)

 知人の精神科医に聞いたのですが、この事件の被告が、父親に身体的虐待を受けていただけでなく、母親にも性的虐待を受けていた事実については、虐待問題を専門にする精神科医が精神鑑定書を書いて、裁判所に被告に対する情状酌量を求めていたそうです。ただし、一審の死刑判決では完全に無視されたそうです。
 アマゾンで検索すると、一橋大学宮地尚子さんたちが訳されたリチャード・B・ガートナーの『少年への性的虐待―男性被害者の心的外傷と精神分析治療ー』 (作品社、2005年)も 、母親に性的虐待を受けていたうえに自殺されて精神的発達が止まってしまった少年の内面世界をマンガ化した山岸凉子の『スピンクス』(白泉社、1980年)ももう絶版になっていました、日本社会が性的虐待、特に少年への性的虐待の問題に対して、理解がないのはもちろんのこと、関心すらもっていないことを痛感しました。