働く女性のうつ

http://www.asahi.com/health/tsuushinbo/TKY201203070407.html?ref=reca より転載
働く女性のうつ 人間関係 大きなストレスに


 働く女性が増え、ハードな仕事で心身に不調をきたす女性も少なくない。女性の場合、職場に絡む悩みの原因が、男性とは違う場合も多く、注意が必要だ。
 「女性は対人関係に重きを置くので、人間関係がうまくいかないことがとてもストレスになる」と、昭和大学付属烏山病院(東京都世田谷区)の平島奈津子准教授(精神科)は指摘する。職場内では、パートや派遣社員、正社員など立場の違いだけでなく、子育て中の女性と独身女性との間にも働き方や待遇には差がある。こうした差があつれきを生みやすく、悩みを抱える女性は多いという。
 「労働者健康福祉機構」が08年、全国の労災病院の女性外来を受診した患者650人にアンケートした結果、ストレスの原因として、最も多いのは家族関係、次いで職場内の人間関係だった。
 女性患者が多い、ひがメンタルクリニックさいたま市)の比嘉千賀院長は「現代の女性は生き方が多様になった分、常に不全感を抱えていて精神的ストレスを受けやすい状態にある」と指摘する。

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 そもそも男性よりも女性のほうがうつ病になりやすい。平島さんによると、うつ病患者の3分の2が女性で、発生頻度は男性の約2倍。妊娠や子育てを経験する25〜40歳前後の世代に多いとされる。
 月経や妊娠・出産などで男性よりも性ホルモンの変動が激しいことが、うつ病の発症に影響していると考えられているからだ。
 このため、間違えやすい症状もある。「月経前不快気分障害(PMDD)」もその一つ。月経開始前の数日間、抑うつ気分や集中力の低下、不眠などが出現する。他にも、更年期障害や、甲状腺ホルモンの異常でもうつ病と同じような症状が出ることがあるという。

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 治療は、なぜうつ病になったか、自分の状態を知ることから始める。抗うつ薬を使った薬物療法に加え、考え方の癖を変える認知行動療法などの精神療法がある。
 産業医と連携した職場の環境調整も重要だ。比嘉さんのクリニックを受診していた20代の女性会社員の場合、会社側が復職のタイミングを会社の組織改編に合わせるなど工夫したのだという。比嘉さんは「復職は元の部署にという社内規定があるところが多い。でも、『わがまま』と片付けず、異動時期に合わせたり、職場の人間関係にもできる限り配慮したりすることが重要」と説明する。
 ただ、人間関係が女性を救う一面も。05年に米で行われた1千組以上の男女の双子を対象にした調査では、わかり合える友人や家族、恋人がいる女性はうつ病の発症率が低かったという。男性の場合は発症率に変化がなかった。平島さんは「気楽に話せる女子会なども予防になるかもしれません」と話す。(月舘彩子)
◆相談ナビ
 最近は、企業が外部の相談機関と契約して、社員がメンタルヘルスの専門カウンセラーらに相談できる「従業員援助プログラム(EAP)」を導入することも増えた。平島さんの著書「女性のうつ病がわかる本」には、うつ病の解説や治療法のほか、精神科のある全国の女性外来が掲載されている。